デビルイートドッグ

尊美山の魔物

ときは奈良時代のころです。


都の右上のほうに、尊美山というがありました。

夜になると黒い魔物が出るのだと都の人たちは噂していました。

あるころから、尊美山の魔物は山をおり都のちかくにも現れ人々をとても怖がらせました。

というのも、その魔物には不思議な力があり、死んだ動物を生き返らせてしまうのです。

死から生き返った動物たちは魔物を自分の主人とあがめ、魔物と自分たちのことを出飛流と呼びました。

日に日に出飛流の数は増えはじめ、人々は都の城壁の外に出るのをこわがりました。

「出飛流に噛まれると疫病になって死ぬ」、「出飛流は人間の子どもを頭から食うのだ」、などと言われていたからです。

朝廷は、増え続ける出飛流をなんとかせねばならぬと、頭を悩ませました。

「わたくし目に、出飛流の退治をご命じ下さい」

豪気のもののふ、葦人が出飛流退治を申し出ました。

「出飛流は俗獣ならぬ、妖であるぞ。この紐切丸を用いるがよい」

朝廷は、妖を切ることができるという国宝の刀、紐切丸を葦人に授けました。

葦人は紐切丸を携え、尊美山を登ります。

「私は朝廷の命により、この山の妖を退治しに来た。そのほうおとなしく降参しこの山を去るが良い、さもなくば、この紐切丸の露と消えようぞ」

葦人は山のてっぺんで声を張り上げました。
すると、みるみるあたりは夕暮れのように薄暗くなり、不穏な風がぴゅうぴゅうと吹きはじめました。
気が付けば、葦人のまわりを数千の出飛流が囲んでじっと葦人をにらんでいます。

「わははははは」

不気味な笑い声とともに、真っ黒な煙に紅く光る眼が二つ、目の前にあらわれました。

「この山を去れとな!?わははは、わはははは」

葦人の手の紐切丸が金色に輝き、「きいんきいん」というような甲高いうなりをあげてます。

「紐切丸がうなっておる、これが魔物の王であるに違いない、退治してくれようぞ!」

えいっと葦人は紐切丸で魔物に切りかかります。しかし、魔物は煙のようで手ごたえは無く紐切丸は空を斬ります。

「魔物め!」

それでも、葦人は果敢に魔物に斬りつけます。

「わはははは、斬るが良い、斬るが良い。ようし、お前たちも遊んでやるがよい」

魔物がそういうと、葦人を囲んでいた数千の出飛流がいっせいに葦人めがけてとびかかりました。