緑海の申し出

朝廷の面々は、魔物の恐ろしさに怯えるばかりで、いったいどうしたらよいのかを決めることや日々の政さえ手に着かなくなるほどおかしな様子になりました。

いつ魔物が攻めてくるのか、そればかりが気になるようになったからです。

だんだん、おまじないや占いが流行し奇行もずいぶんと行われました。

朝廷でいつもの魔よけの儀式を行おうとしていたところ、きりりとした顔つきの僧侶が意を決したかのような顔つきで、うやうやしく現れました。

「尊美山の魔物は葦人さまと紐切丸でも倒せませんでした、おそらくこの地の魔物ではないと思われます」

「大陸で学んだ術に加え、修行で身に着けましたる密教の術にて魔物を退治させていただきたいと思います」

緑海の申し出に朝廷の面々は、大いに喜びました。

大陸にて仏教ともろもろの術を学んでおり僧侶の中でも最高位にいる緑海は、都でも知らぬ者のいない高名な僧侶です。

貴族たちも、緑海ならなんとかしてくれるであろうと心配顔から笑顔になりました。

「かの魔物はおそろしく強力です。わたし一人の力では倒せません。多くの物資、多くの僧侶が必要となります」

貴族たちは、よいよいと承諾しました。

こうして、術を身に着けたる僧侶緑海が尊美山の出飛流と魔物を退治することになったのですが、緑海が魔物退治に必要だというもの量の多さ、僧侶の人数の多さには朝廷もたいそう驚いて腰を抜かすものもいました。

とくに芋が大量に必要なのです、緑海はいいきります。

しかし、その量は朝廷が扱う1年分の芋の量なのでした。

また、僧侶は千人必要ということです。

国中の僧侶が都に集められ、いたるところに僧侶が見られるようになりました。

芋ほり小僧たちも

「つるつる坊主が、いっぱいだあ」

と重くなるほど芋をたくさん背負って、坊さんの歌を歌っておりました。

尊美山のほうを向いた都のはずれの更地に、芋がうず高く積み上げられてゆきます。

緑海は芋の山を見ながら、うんうんとうなずくのでした。