魔物封印の儀

いよいよ、魔物封じの儀を行う日、緑海は僧侶千人を集めました。

「この儀式が終わったあと、わたしの命はないだろう」

魔物を封印するために用意した玉が置いてある高台の真下にある瓶を指し

「なにがあろうと、魔物を封印したらあの瓶に放り込み、この石で蓋をするのだ」

瓶と蓋にはすでに特殊な儀式が済ませてあり、魔物は絶対に中から外にでることが出来ない。

「最も大切なことだが、この儀式を二度と行ってはならない」

「この儀式は人の世で行うものではないのである」

そう話したあと、緑海と僧侶は礼をしました。

高台を円状に囲む無数の芋の入った瓶に水が入れられ、次々に巻に火がつけられていきます。

儀式が始まろうとしています。

さらに燃え上がる煙の周りを僧侶千人がぐるりと取り囲み、読経が始まりました。

ごうごうと燃える薪から灰色の煙がもうもうとたちのぼり、ぐつぐつと煮える芋が湯の中で踊ります。

僧侶千人の読経と、叩かれる鐘がぐおんぐおんと鳴り響きあたりの空気を清めます。

その輪の中心で落ち着いた表情で真言を唱え印を結び続ける緑海。

「テイ スバ ソワテイ ユウオン ギャスム テュゥ」

魔物よ、この真言が聞こえていたら、ここへ来い。

きっと聞こえているはずだ。

聞こえないはずがない。

この真言は、あの世のお前の本名なのだから。

緑海は、真言を唱え続けながら聖堂の銅鐸をバチでガンガンガンガンと9回続けて叩くのです。

魔物よ、さあこい。

そのとき、尊美山の魔物は自分の名が呼ばれてていることに、山のてっぺんで気が付きました。

「わはははは、この世でわしの名を呼んだものは誰じゃ??」

「わははははははは、ははははは」

魔物は声高く笑うと、黒い煙から碧い稲妻に変身し、緑海のいる方向へ光の速さで飛んでいきました。

あまりの早さに、魔物が通り抜けた後には全ての生き物の命が失われました。